かになべ

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夢を説明するAIMモデル等について読む

最近私の中で夢の科学が面白い。

脳科学辞典によると夢の定義はこう。
bsd.neuroinf.jp

「ヒトが睡眠中に受容する、感覚・イメージ・感情そして思考の連続体であり、以下の6つの要素を有する。」

(1) 幻覚様のイメージ体験

(2) 物語風の構造

(3) 断続的で不調和、不安定な奇異的知覚特性

(4) 強烈な情動性

(5) 体験していることをあたかも現実のもののように受け入れる

(6) 忘れやすい

現在のところ、夢がどのような神経機構により生み出されるのかについて、一致した見解はないらしいが、現在提唱されている夢の発生機構についての仮説は、いくつかあるらしい。

主たる夢体験はレム睡眠中にもたらされれるものらしい(レム睡眠時以外にも夢をみている)。レム睡眠、ノンレム睡眠それと覚醒時の状態について、説明するAIMモデルというものがある。

これを手元においてメモし直すことで考えてみたいので、これも脳科学辞典から引用する。

AIMモデルの3要素:

① 皮質の活動レベル(activation: A)

② 情報の入力源(input source: I)

神経伝達物質による調整(modulation: M)

各状態のAIMモデルによる評価

〇覚醒状態:

 ・皮質の活動レベルAが高い

 ・情報Iは外界に依存している

 ・神経伝達物質ノルアドレナリンセロトニン系が優位(→注意の集中状態)

〇ノンレム睡眠

 ・皮質の活動レベルAは弱い

 ・情報Iは外因性・内因性の両方。

 ・神経伝達物質ノルアドレナリンセロトニン系は弱まる。

レム睡眠

 ・活動レベル(A)は再度上昇する。

 ・情報入力源(I)は内因性となる。

 ・調整(M)はコリン系に移行する。

大脳皮質の活動レベル(A)は、覚醒状態で高まるので「理性の強さ」と捉えてもよいのだろう。

情報入力源(I)は、覚醒状態は外界の割合がもちろん多く、レム睡眠が内部の割合が多い。そして、ノンレム睡眠が内外入り混じるというモデル提案になっている。

これは、レム睡眠中は外部刺激に対する応答は著しく低下する、というサーベイに拠っていると思われる。

https://www.tsukurupajama.jp/pajamapedia/sleep/3998(https://www.tsukurupajama.jp/pajamapedia/sleep/3998)

レム睡眠中は、体が感じている刺激は無視されるので、例えば、下例のようにベッドから落ちた時に夢に落下体験がある、といったような夢見体験が起きるようなタイミングは、ノンレム睡眠が優位と言えるのかもしれない。

https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1327631008(https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1327631008)

映画「インセプション」では、体が体験している内容が「上位世界からの情報伝達」として夢体験に反映される、という重要な設定があった(寝ている体が落下していれば、三半規管から情報伝達されて、夢は無重力状態になる、など)。この現象自体は夢体験の面白さの妙味であるが、夢としては浅くなるノンレム睡眠時に起きやすい現象であることが示唆される。


https://cinemore.jp/images/3d81a64ad7387a2c5bca2ec411edc01a36ec8e05c9f7ea590223f26a42749963.jpg


神経伝達物質は脳内でさまざまな働きをしており、現状であんまり理解できていない。それこそ、覚醒-睡眠の脳を含めた身体の状態遷移を制御している、ということなのだとなんとなく思っている。

したがって、神経伝達物質による調整の軸(M)が夢体験において何を形成する要素なのか、言語化して理解するのは、未来の自分に期待する。

ちなみに、夢は昼間体験した記憶を整理するとする機能があるとされるが、アセチルコリンは、海馬において記憶の形成や強化に関与するとされる。

さらにAIMモデルの説明を読む。

レム睡眠では、橋被蓋部の賦活によって活動レベルは高いにもかかわらず(ただし意志、判断、ワーキングメモリーなどの高次脳機能を司る前頭前野のレベルは覚醒時よりも低い)、外部からの入力は遮断され、運動出力もブロックされる。そのため脳は内部で生じる感覚を現実のものと解釈する。さらにPGO-waveによって扁桃体辺縁系が活動するため情動的な要素が付加される。

活性化合成仮説(AIMモデルの前段にあった仮説)では、レム睡眠中に橋脳幹部で発生する相動的でランダムな入力(ponto-geniculo-occipital wave: PGO-wave)が大脳皮質と前脳辺縁系を活性化し、それら部位の活動により生み出された情報が合成されて夢が生じると考える。

まずレム睡眠時は脳の活動レベルが高い、とある(夢を見ているときには、あれだけの意識体験があるので、当然と言えば当然の気もする。)

出てくる脳部位の説明を取り出しておく。

橋被蓋部

脚橋被蓋核とは脳幹にある神経核である。(中略)脚橋被蓋核基底核-大脳皮質ループおよび網様体脊髄路系を介して運動の発現や姿勢筋活動の制御に関与するとともに、視床-大脳、大脳基底核投射や網様体賦活系を介して意識レベルや睡眠・覚醒、注意、動機付け、学習の調節に関わっていると考えられている。

前頭前野

ヒトをヒトたらしめ,思考や創造性を担う脳の最高中枢であると考えられている。前頭前野は系統発生的にヒトで最もよく発達した脳部位であるとともに,個体発生的には最も遅く成熟する脳部位である。一方老化に伴って最も早く機能低下が起こる部位の一つでもある。この脳部位はワーキングメモリー、反応抑制、行動の切り替え、プラニング、推論などの認知・実行機能を担っている。また、高次な情動・動機づけ機能とそれに基づく意思決定過程も担っている。さらに社会的行動、葛藤の解決や報酬に基づく選択など、多様な機能に関係している。

辺縁系の説明は回帰的に取り出しておく。

大脳辺縁系(limbic System)

帯状回や海馬体を含む大脳の辺縁皮質と、扁桃体、乳頭体、側坐核を含む核、そしてそれらを連絡する脳弓などの神経線維から構成される。視床下部辺縁系に含まれることがある。

帯状回(cingulate gyrus)

視床や、大脳皮質の体性感覚皮質と連絡している。また、大脳辺縁系の各部位を結びつける役割も果たしている。帯状皮質(cingulate cortex)とも呼ばれる。 前帯状皮質は、報酬の予測に基づく運動意志決定や、共感などの認知機能に関わっている。

海馬体(hippocampal formation)

歯状回や海馬、海馬台などから構成されるが、慣例としてこれら全体を海馬(hippocampus) と呼ぶこともある。PTSDやうつの患者では海馬の萎縮が確認される。海馬体には、場所細胞のような世界を認識する地図が形成されており、これらのユニットの組み合わせで現在の状況を表象していると考えられる。これらの表象は一時的なものであり、大脳皮質での長期記憶が形成されるまでの短期記憶バッファであるとも考えられている。

扁桃体(amygdala)

視床から送られてくる刺激情報の価値判断を行い、(1)古典的条件付けによる情動の学習や、(2)長期記憶形成の調節、(3)情動の喚起に関わっている。扁桃核とも呼ばれる。 (1)については、負の条件付け、あるいは正の条件付けによって刺激と情動の関係を学習する。(2)については、学習される出来事の後の情動の喚起が強いほど、記憶が強く固定化されるといわれる。(3)については、視床下部への連絡があり、(1)の学習の結果として刺激に応じた情動が喚起されるようになる[2]。視床下部や、大脳皮質からも刺激情報を受け取り、価値判断を行っている。

側坐核nucleus accumbens)

扁桃体視床下部を通過した情動刺激や腹側被蓋野を経た、快感や満足感につながる刺激を受け、ドーパミンを放出する。ドーパミンは快の感情を引き起こし、基底核線条体での強化学習の報酬となると考えられている

[サーベイ]神経系 – 中枢神経系 – 脳 – 辺縁系 | Systems Android Robotics




これによって、前述で定義された夢の6要素のうち、以下については説明できそうな気がする。
気がするだけなので、ここから先は拠るもののない独自解釈(?を付しておく)も混ぜて書いてしまう。

(2) 物語風の構造

・ノンレム睡眠に比して、レム睡眠時は皮質の活動レベルが上昇する。
前頭前野の活動レベルについては、覚醒時よりは低下するが、推論機能があるので、ランダムな入力(ponto-geniculo-occipital wave: PGO-wave)によって発生した内部の感覚(情報)について、整合をとるようにストーリーを解釈する?

(3) 断続的で不調和、不安定な奇異的知覚特性

PGO-waveの持つランダムさに由来する?

(4) 強烈な情動性

「PGO-waveによって扁桃体辺縁系が活動するため情動的な要素が付加される。」とある。
起きてから夢体験を振り返って、なんでこれがこんなに怖かったんだ?とか思うアレ。

(5) 体験していることをあたかも現実のもののように受け入れる

なかでもよくわからない(体験としてはわかる)。
たいていの夢はそうであるが、例外も存在する現象である(明晰夢)。
(2)でもあったストーリーの生成機能がそうさせていそうな気もするが、現実のように思うことに何かしらの合理性があるのだろうか?
(かえって現実と混ざって混乱するのでは、進化生物学的に不利では?)
Jouvetの「夢は行動プログラムの作成と模擬演習のために生じる」という仮説を指示すれば、説明はつきそうな気もする。


おわり。引き続き探索を続ける。





私の夢ブームに火をつけた本。
夢の正体 夜の旅を科学する